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最高裁判所第一小法廷 昭和41年(オ)1297号 判決 1967年4月27日

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人中平博文の上告理由第一、二点について。

原判決の認定した事実は、その挙示の証拠関係により、これを肯認することができる。右事実、とくに、高知市附近では土木建設請負業者が土木建設機械をその販売業者から買い受けるについては、通常代金は割賦支払とし、代金完済のとき始めて所有権の移転を受けるいわゆる所有権留保の割賦販売の方法によることが多く、上告人は、古物商であるが土木建設機械をも扱つていたから、右のような消息に通じているものであるなどの事実に徴すれば、上告人が本件物件を買い受けるに当つては、売主がいかなる事情で新品である土木建設の用に供する本件物件を処分するのか、また、その所有権を有しているのかどうかについて、疑念をはさみ、売主についてその調査をすべきであり、少し調査をすると、訴外博興建設有限会社が本件物件を処分しようとした経緯、本件物件に対する所有権の有無を容易に知りえたものであり、したがつて、このような措置をとらなかつた上告人には、本件物件の占有をはじめるについて過失があつたとする原判決の判断は、当審も正当として、これを是認することができる。

原判決には、所論のような違法はなく、所論は、結局、原審の専権に属する証拠の取捨、選択、事実の認定を非難するか、または、原審の認定しない事実を前提として原判決を非難するに帰し、採用しがたい。

よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 長部謹吾 裁判官 入江俊郎 裁判官 松田二郎 裁判官 岩田 誠 裁判官 大隅健一郎)

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